JR松山駅高架化・誘導信号による特急の「縦列停車」終了へ

2024年9月29日(日)の始発より、JR松山駅が高架化されます。

従来は改札口(駅舎)に直結している1番線において、岡山・高松方面の特急「しおかぜ・いしづち」と、宇和島方面の特急「宇和海」を”縦列停車”の形で接続をとっていましたが、高架化後は1・2番線での”対面乗換”に変わります。


なぜ縦列停車をするのか?

従来のJR松山駅は改札口に面した1番線と、島式ホームの2・3番線という「2面3線」の構造となっています。

松山駅を発着する列車のなかで最も利用客が多いのは特急「しおかぜ・いしづち」で、階段・通路をわたることなく改札口に平面アクセスできるように1番線を固定で使用しており、2・3番線は主に普通列車が使用しています。

さて、松山駅を発着する特急はもう1種類あり、予讃線下り方面(宇和島方面)への特急「宇和海」が、特急「しおかぜ・いしづち」と同等の本数で運転されています。

松山駅では特急「しおかぜ・いしづち」と特急「宇和海」を乗り継ぐという需要も一定数あるため、

・特急「しおかぜ・いしづち」は改札口直結の1番線に停めたい
・荷物の多い長距離旅客に配慮して階段を使用せず乗換え可能としたい
・つまり特急「宇和海」も1番線に停めたい
・あまり待たせず(10分程度で)乗り継げるようにしたい

これらを実現するために、JR松山駅では「1本のホームに2本の列車を縦列停車させる」という全国的にも珍しい取扱いが実施されているのです。

JR松山駅での特急乗継(2024年9月28日まで)

それでは、松山駅1番線での「縦列停車」による乗換えの一例として、15時台の動きを見てみましょう。

下り 岡山・高松方面から宇和島方面への乗継
①15:17 下り特急「しおかぜ11号・いしづち11号」松山駅着
(乗換時間:10分)
③15:27 下り特急「宇和海19号」松山駅発

上り 宇和島方面から岡山・高松方面への乗継
②15:20 上り特急「宇和海18号」松山駅着
(乗換時間:8分)
④15:28 上り特急「しおかぜ24号・いしづち24号」松山駅発

これを、1番線ホームの視点で時系列に並べると、

①15:17 下り特急「しおかぜ11号・いしづち11号」松山駅着
②15:20 上り特急「宇和海18号」松山駅着
③15:27 下り特急「宇和海19号」松山駅発
④15:28 上り特急「しおかぜ24号・いしづち24号」松山駅発

このように分刻みで特急列車が着・発しています。

特に②上り宇和海18号到着から③下り宇和海19号発車までがわずか7分しかなく、この間に上りの乗客全員を降ろし、車内の清掃点検を行い、下りの乗客全員を乗せるという、かなり慌ただしい設定となっています。

縦列停車の方法「誘導信号」

一般的に駅のホームに据付けることができる列車は、信号システムのうえで1本のみとなっており、松山駅のように2本の列車を「縦列停車」させる場合や、2本の列車を連結させる場合には、後から到着する列車に対して”くふう”が必要となります。

その”くふう”のひとつに「誘導信号」というものがあり、1本目の列車がホームに入った後、2本目の列車を駅の手前(場内信号機外方)に一旦停止させてから「誘導信号」により同じホームへと進入させます。

言葉で表現すると小難しいので、写真で見てみましょう。
まずは、松山駅1番線ホームの視点から。


↑①下り特急「しおかぜ・いしづち」が特に制約なく1番線に到着します。


↑②上り特急「宇和海」が誘導信号により1番線に進入し、停止位置を係員が赤旗で合図します。

また、1つの区間内(専門用語で「閉塞」といいます)において、2つの列車が同時に動くことは認められていないため、特急「宇和海」が進入する際は、停車中の特急「しおかぜ・いちづち」に対して移動禁止を示す赤色灯が点灯しています。


↑②上り特急「宇和海」が到着すると、停車中の特急「しおかぜ・いしづち」に対する移動禁止が解除となります。

続いて、②上り特急「宇和海」の視点で見てみましょう。


↑上り特急「宇和海」は松山駅の手前(場内信号機外方)で一旦停止し、指令へ無線で「手前で停止した」ことを報告します。

先ほどの「ひとつの閉塞内で2つの列車が同時に動くことは認められていない」制約のため、下り特急「しおかぜ・いしづち」が松山駅1番線に到着するまでの間は、この場所で待機していなければなりません。

※JR四国の規程をきちんと確認したわけではありませんが、仮に特急「しおかぜ・いしづち」が早めに松山駅へ到着済であったとしても、この位置で一旦停止しないといけないルールであるようです。


↑下り特急「しおかぜ・いしづち」が松山駅1番線に到着後、誘導信号機が点灯します。
 色灯式信号機は「赤」のままなので、赤信号なのに進んでいくようにも見えます。


↑誘導信号による進入は、通常の方法とは異なるため、区間内では最高速度が時速15キロに制限され、ゆっくりと進入していきます。


↑係員の手旗合図に合わせて、縦列停車します。


↑2つの列車の間は10mほどしか離れておらず、かなり近いところまで寄せて停車となります。

高架化完成により縦列停車は見納め

2024年9月29日より、JR松山駅は高架化された新駅舎を使用開始となり、構造が1~4番線までの2面4線に増強されます。

原則として、特急「しおかぜ・いしづち」は1番線を、特急「宇和海」は2番線を使用し、2つの特急は対面乗換えが可能となるため、従来の地上駅で行っていた「縦列停車」は見納めとなります。

「縦列停車」の場合は、8両編成の特急「しおかぜ・いしづち」から3両編成の「宇和海」へ乗換えるために、最大10両分(約200m)歩く必要があったので、高架化により利便性が向上することとなります。

なお、誘導信号による進入は、関東圏では東京駅(特急「成田エクスプレス」)や熱海駅(特急「踊り子」)で見ることができます。

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