2018年シーズン(2018年11月30日)をもって「関電トンネルトロリーバス」が営業を終了するということで、現地へ乗りに行ってきました。
(初回投稿:2018年10月15日,加筆修正:2024年10月31日)
トロリーバスとはナニモノ?
トロリーバスは「無軌条電車」と呼ばれる「鉄道」の一種であり、
・一般的な電車と同様に架線から電気を取り入れてモーターで走る
・線路は敷かれていないのでハンドル操作が必要
・車両の見た目はバスである
というものです。
かつては複数の都市で走っていたトロリーバスですが、モータリゼーションによる自動車の増加や車両の維持管理が難しいことから、2018年10月現在も営業しているは立山黒部アルペンルートの「関電トンネルトロリーバス」と「立山トンネルトロリーバス」の2路線のみとなっています。
このたび、2018年11月30日をもって関電トンネルトロリーバスの営業が終了となり、電気バスへと置換えられることになりました。
立山黒部アルペンルートとは
立山黒部アルペンルートは、富山県の立山駅から長野県の扇沢駅までを貫く「乗継ぎルート」のことで、電車やバスに乗って通り抜けるだけでも大自然を満喫できるコースになっています。
立山駅-美女平 立山ケーブルカー
美女平-室堂 立山高原バス
室堂-大観峰 立山トンネルトロリーバス
大観峰-黒部平 立山ロープウェイ
黒部平-黒部湖 黒部ケーブルカー
黒部湖~黒部ダム 徒歩
黒部ダム-扇沢駅 関電トンネルトロリーバス
直線距離は25kmほど、最大高低差は1975m、総延長は37.2kmとなっています。
立山駅~黒部湖の各種乗り物は「立山黒部貫光」が運営しており、立山黒部「観光」ではなく山を貫く「貫光」としているのがイケてますね。
黒部ダム~扇沢の関電トンネルトロリーバスは「関西電力」による運営で、関電トンネルは黒部ダム~黒部川第四発電所の黒部トンネルと接続されています。
黒部トンネルの黒部川第四発電所方面へは発電関係者専用となっていますが、見学会に応募して当選すると黒部ダム~黒部川第四発電所~欅平のルートを辿ることが可能です。
立山黒部アルペンルート実乗記(立山→扇沢)
なるべく混雑に巻き込まれずにアルペンルートを乗り通すにはどう動くのが良いかを調べてみたところ、
・混雑時は当日中に乗り通せないことがある(→早めに出発したほうが良い?)
・朝イチの立山駅は混んでいて、11:30頃から落ち着く (→あまり早いのも微妙?)
とのことで、アルペンルートは登山の一種とも言えるので朝イチは混んでいる説を信じて、立山駅を12時過ぎにスタートするように動くことにしました。
それにしても、当日中に乗りとおせない…というのは、室堂で強制的に宿泊することになるのか、輸送力を調整しやすいバス+ケーブルカーで立山へ送還されるのでしょうか??
さて、まずは富山地方鉄道の電車で立山駅へ向かいます。
地鉄富山駅から立山駅までは約1時間、運賃は1200円です。
車内は転換クロスシートで座り心地は良く、月曜の午前中ということもあって空いており、立山駅で降りたのは20名ほどでした。
立山駅ではまず、webで予約していた切符を引き取ります。
一旦コンコース外に出て、発券窓口へ行くと、窓口の混雑はなくすぐに受取れました。
今回予約したのは「平日割WEBきっぷ」立山駅→扇沢で7480円です。
なお当日券の「通り抜けきっぷ」立山駅→扇沢は8290円です。
窓口では立山ケーブルカーの時間指定が必要で、直近の12:20発を選択しました。
どうやらアルペンルートの入口である立山駅構内と、この先の乗継ぎポイントで待ち人があふれないように、ここでコントロールしているようでした。
公式HPによると、ケーブルカーが満員になった場合は臨時便を出して対応するとのことでした。
立山12:20-12:27美女平 立山ケーブルカー
ケーブルカーの改札では一般・団体と列が分かれていましたが、団体向けの臨時便が運転されるというわけではなく、アジア系の観光客団体と同乗することになりました。
終盤はかなりの急勾配を上って美女平に到着。
続いて室堂までは立山高原バスに乗ります。
途中区間には乗降可能な停留所があり、一般定期便+室堂直行便の2台体制で運行とのことです。
団体客がいると分かっている場合は、さらに臨時直行便の増便があり、ちょうどその臨時便に案内されました。
美女平12:33-13:15室堂 立山高原バス(臨時直行)
元々は12:40発の直行便の予定でしたが、運良く1本前に乗れる形になりました。
バスは出発直後から勢いよく九十九折れの山道で車酔いの不安が生じましたが、意外と大丈夫でした。
乗ってから知りましたが、進行方向「左側」のほうが車窓の見どころが多かったです。
対向車を見ていると「定期1台+直行1台+臨時4台」という車列で走っているものもあり、状況に応じて輸送力を変えられるバスの強みを活かしていました。
さて、室堂に到着すると標高2450mということもあり、バスを降りるととても寒かったです。
室堂ターミナルにはレストランとカフェがありますが、富山発(立山→扇沢)と長野発(扇沢→立山)の中間地点ということで双方の客が入り乱れて大混雑となっていました。
続いて立山トンネルトロリーバスで大観峰へ向かいます。
↑各所の乗り場には共通の表示機で時刻案内があり、とても分かりやすいです。
室堂13:30-13:40大観峰 立山トンネルトロリーバス(臨時)
臨時を含めて15分間隔で運転しており、1便あたり3台体制です。
改札を入ると「お好きな車にご乗車ください」とのことで、最も人気がなさそうな3台目に乗り込みます。
ちょうど座席は埋まってしまいましたが、前方が見える良い位置取りで乗車できました。
運転席の計器類や、動き出しの感じなど、とっても「電車っぽい」です(笑)
さらに、中間地点で対向車列と行き違い時には…
近隣の一般客からは
「(珍しいモンだと聞いてきたが)ふつうのバスだね」
との声が聞こえてきましたが、
全っ然ふつうではありません!!(笑)
大観峰の降車場は岩場にあるため通路が狭く、降りたあとは係員の誘導に従い出口へ向かうように…とのことで、あまりゆっくり写真を撮っていると注意されそうな雰囲気でした。
車体の様子などは室堂で乗り込むときに撮っておくと良いでしょう。
大観峰には観光施設はありませんが、黒部ダムを見下ろす景色がきれいでした。
次はロープウェイで黒部平へと下りていきます。
他の乗り物に比べて乗車定員が少ないことから、このロープウェイがボトルネックになる…という情報もありましたが、こちらも随時臨時便を出しており特に問題ありませんでした。
13:45発の臨時便の列にいたところ、さらに続行臨時を出すとのことで、
「1台見送っても良いので、良いポジションで乗りたい」ような顔(←どんな顔だ)をしていたのが改札係員に通じたようで、13:50発の続行臨時便へ案内されました。
待機中は係員からアルペンルートについての紹介説明会、さらに写真集即売会まで実施していて商売上手でした(笑)
大観峰13:50-13:57黒部平 立山ロープウェイ(臨時)
ロープウェイは自然環境保護と、雪崩対策のため、途中に支柱の無いワンスパンタイプです。
紅葉シーズンなので景色がとてもきれいでした。
黒部平に着いたのは14:00発のケーブルカーに乗れなそうなタイミングで、構内の立ち食い蕎麦屋に寄ってみました。
立ち食い蕎麦屋といっても座って食べるスペースがあり、さらに立山の天然水飲み放題(笑)
山の奥までの運送費がかかるので多少は値が張るだろう…と思っていたら、かけそば550円~とふつうのお値段設定でした。こちらの「玉子とろろ蕎麦」は800円。
アルペンルートは富山⇔長野の移動手段というよりは、観光に特化した交通機関ですが、こちらのお店は手頃なお値段、迅速な調理、熱すぎない温度で提供と交通要衝の駅そばの要件をしっかり満たしていました。
続いて黒部ケーブルカーで黒部湖へ向かいます。
表示機には定期便のみ表示されていましたが、またまた続行臨時便の運行があるとのこと。
再び「1台見送っても良いので、良いポジションで乗りたい」ような顔で並んでいたら、ちょうど続行便への案内となり、運転席わきの良い位置に乗れました(笑)
黒部平14:25-14:30黒部湖 黒部ケーブルカー(臨時)
全線が地下(トンネル内)のため独特な雰囲気です。
到着した黒部湖の駅構内も独特な雰囲気。
黒部湖~黒部ダム 徒歩600m
公式HPに「徒歩600mの通路」と表現されていて、いったいどんなモンかと思っていましたが、黒部ダムの構築物上を歩く形になっており、気持ちの良い散歩コースでした。
ダムの構築物上を歩くため、左は深い谷、右は湖面となります。
ケーブルカーのトンネル内はひんやりと寒かったですが、地上の日なたに出ると暑いです。。
黒部ダムの観光放水は毎年10月15日までとのことで、せっかくなので放水ステージへ。
続いて本日のメインイベント、関電トンネルトロリーバスは混雑を想定して早めに改札へ向かいます。
改札の列は1・2・3と分かれており、15:10時点ですでに2名ずつ待っていました。
各改札で1号車、2号車、3号車と振り分けるのかと思ったらそうではなく、前に並んでいた人から1号車へ案内、1号車の座席が埋まると2号車へ、最終号車の座席が埋まると1号車の立席…という形で乗せていました。
したがって「最前列に座りたいので後の号車でいいです」といった希望をすることはできず、特定の位置を狙うのは非常に難しいです。
なお対向車列(夕方の扇沢発でガラガラ)では2号車の最前列にぽつんと1人で座っている人が居たので、混雑時間帯を避ければ多少の融通はきくのかもしれません。
黒部ダム15:35-15:51扇沢 関電トンネルトロリーバス
繰り返しになりますが、トロリーバスは無軌条電車といって、見た目はバスですが、架線から供給する電気で動き、鉄道事業法のもと運営される「電車」です。
エンジン式のバスだと地下トンネルに排ガスが充満してしまうという、この地特有の事情で導入されたトロリーバス方式ですが、電気設備の維持管理都合と電気自動車の技術進歩により、2018年冬の運休期間中に電気バスへ変更されることになりました。
関電トンネルトロリーバスの営業は2018年11月30日が最後となり、無軌条電車としての営業を終了するため、関西電力は鉄道事業廃止の届出をしています。
さて、もともと紅葉シーズンは混むものなのか、トロバスラストフィーバーなのかは不明ですが5両のバスに立客まで満載というものすごい状態で出発しました。
トンネル内に東芝GTOのVVVF音が響く感じがとても良いですv
対向車列との離合ポイントを過ぎてから富山・長野県境の表示があり、アルペンルートは大部分が富山県に属しています。
車内大混雑のため道中では写真を撮る余裕もなく、最後は屋外区間に出て扇沢へ到着。
定員72名×5台=360人が、ドーっとたくさん降りて歩いている様子が圧巻でした(笑)
アルペンルートを乗り通しての全体的な感想としては、美女平~室堂のバスがやや長くて微妙な区間だったのと、せっかく行くならば黒部湖や室堂でゆっくりしたほうが良いと感じました。
トロリーバスの扇沢到着が15:51で、信濃大町行のバスは16:00発。
先ほど360名がドーっと降りてきたばかりなので、1つしかない窓口が大変混雑しており、並んでいるうちにバスは発車していきました。。
混雑時はとりあえず乗せるだけ乗せて、降車時に支払いできると良いのですが、事前購入しないといけないようです。
行列対応の係員いわく、この後すぐに温泉郷経由の信濃大町行があり、16:30の臨時便を出すかは微妙…とのことで、混雑状況に応じて弾力的に対応しているようでした。
扇沢駅16:05-16:38信濃大町駅 北アルプス交通バス
関電アメニックス北アルプス交通の担当便で、アルペンルートの乗継時刻表には表示がなく、アルピコ交通のHPには16:00発として掲載されていました。
16:00に発車していったのが臨時直行便で、こちらが定期便なのかもしれません。
そして先ほど「行列対応の係員」だと思ったお兄さんがこの便担当の運転手さんでした(笑)
扇沢では20名程度の乗車で、半数程度が大町温泉郷で降りて、信濃大町駅まで乗車したのは10名弱でした。
信濃大町駅からは大糸線で松本駅へ出て、最終の特急スーパーあずさで帰り着きました。
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