映画「鉄道員」のロケ地・幾寅駅(幌舞駅)が廃止へ。

2024年3月31日をもって、根室本線の富良野~新得(81.7km)が廃止されます。

これに伴い、同区間内途中駅の7駅(落合・幾寅・東鹿越・金山・下金山・山部・布部)も同日付けで廃止となります。

幾寅駅は1999年公開の映画「鉄道員(ぽっぽや)」のロケ地として使用され、映画のなかでは「幌舞駅」という名で「出演」していました。

駅舎は撮影当時の「幌舞駅」のまま保存されており、駅のなかには撮影で使用された衣装などが展示されています。

現役営業中の駅が、架空の名称である幌舞駅としか名乗らないのは、鉄道事業上の不都合があるのか、申し訳なさそうにちょこんと「幾寅駅」の表示があり、ホームの駅名表示板も「幾寅」となっています。

駅前には撮影セットがいくつか展示されており、映画で「キハ12-23」を名乗っていた元キハ40-764のカットモデルもあります。

夏に来て全体像が見えるのも良いですが、やはり映画のシーンに想いを馳せるには冬のほうが良いかもしれません。

「幌舞駅」は幌舞線の「終点」という設定で、幾寅駅の東鹿越方が終端、落合方が隣の「北幌舞駅」とされていました。

幾寅駅から落合方を見ると、映画で使用されていた腕木式信号機が設置されています。
(モックアップとして置いてあるだけで、根室本線の列車に対する信号機としては機能していません。)

幾寅駅は、映画の幌舞駅のように過疎化を極めて誰も利用しなくなってしまった…というわけではなく、少数ながら地元利用者があるようでした。

2009年9月に訪問した際は到着した列車から数名が降車し、2022年1月に訪問した際は代行バスから1名が降車しました。

このように列車が行き来するのを見られたのは2016年8月までのことで、台風被災により幾寅駅を含む東鹿越~新得が長期間不通(バス代行輸送)になってしまいました。

地元自治体は鉄道としての復旧を希望していましたが、JR北海道から今後の維持が難しいとの見解が出され、2024年3月31日をもって同区間が廃止されることとなりました。

さて、映画「鉄道員(ぽっぽや)」のあらすじは、主人公・佐藤乙松(演・高倉健)が国鉄幌舞線の終着駅「幌舞駅」の駅長を務めており、乙松駅長の定年退職とともに幌舞線が廃線になることが決まり、鉄道員ひとすじに生きてきた乙松駅長が不思議な体験をする…というものです。

映画の公開からおよそ25年が経過し、その舞台となった幾寅駅も、幌舞駅と同様に廃止されることになってしまいましたが、7年半にもおよぶ「台風被災によるバス代行」という中途半端な状態に決着がついて、劇中で殉職した乙松駅長もやっと安心できたのではないでしょうか。

※本記事に掲載の写真は2009年9月および2022年1月に撮影したものです。

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